サーバー移転時にhostsファイルを編集して、移転後のサーバーを確認
hostsファイルを編集する意味とは?
サーバー移転を行う際、DNS情報の切り替えを伴うため、反映までに時間差(タイムラグ)が生じます。
これにより、サイト訪問者や自分自身のパソコンが、旧サーバーを見ているのか新サーバーを見ているのかが分からなくなるケースがあります。
このような混乱を防ぐために有効なのが、「hostsファイルの編集」です。hostsファイル
とは、特定のドメインに対してアクセスする際、どのIPアドレスを参照するかをローカルで強制的に指定できる仕組みです。
- 新サーバーにサイトを移行したが、DNSはまだ切り替えていない
- 新サーバーでサイトのリニューアルを進めている
- 新環境でWordPressやPHPバージョンが変わるため、互換性のチェックを事前に行いたい
- 動作確認後に、問題なければDNSの切り替えを行いたい
hostsファイルを使えば、他のユーザーには影響を与えず、自分のPCだけ新サーバーにアクセスすることが可能になります。
hostsファイルの変更はPC単位で反映され、ブラウザのキャッシュとは別のレイヤーで動作します。
複数人で確認する場合は、各自のPCで同様に設定する必要があります。
hostsファイルの仕組みと役割
hostsファイル
とは、特定のドメイン名に対して、強制的にIPアドレスを割り当てることができるテキストファイルです。
インターネット上の名前解決(ドメイン → IPアドレス)は通常、DNS(Domain Name System)によって行われますが、hostsファイルはそのDNSよりも優先される仕組みになっています。
123.456.78.90 example.com
123.456.78.90 www.example.com
このように記述することで、example.com
にアクセスしようとした際、PCはDNSを参照する前に、まずhostsファイルの情報を確認し、指定されたIPアドレスへアクセスします。
hostsファイルを使うことでできること
- サーバー移転先の動作確認(一般公開せずに検証が可能)
- ローカル環境での仮運用
- テストサーバーへの一時的な切り替え
注意点
- hostsファイルの編集ミスはアクセス不能の原因になります。記述形式やスペースの位置などに注意が必要です。
- 編集後はブラウザのキャッシュやDNSキャッシュをクリアしないと、変更が反映されないことがあります。
このように、hostsファイルを使うことで意図的に名前解決の結果を操作できるため、移転やテストの際に非常に便利です。
次のセクションでは、WindowsとMacそれぞれの編集手順を具体的に解説します。
Windowsでhostsファイルを編集する手順
Windows環境でhostsファイルを編集するには、管理者権限でテキストエディタを開く必要があります。
誤って保存できなかったり、編集できないといったトラブルを防ぐためにも、以下の手順で慎重に進めましょう。
手順①:メモ帳を管理者として実行

- スタートメニューで「メモ帳」と検索
- 「メモ帳」が表示されたら、右クリックして「管理者として実行」を選択
手順②:hostsファイルを開く

- メモ帳が開いたら、[ファイル] → [開く] をクリック
- 次のパスを直接入力してEnter(ファイルの種類を「すべてのファイル」に変更する必要があります)
C:\Windows\System32\drivers\etc\hosts
手順③:移転先サーバーのIPアドレスとドメイン名を追記

以下のように、新サーバーのIPアドレスと該当ドメインを追記します。
IPアドレスは契約中のサーバーの管理画面より確認してください。
123.45.67.89 example.com
123.45.67.89 www.example.com
※スペースやタブで区切ります。行頭に「#」がある場合はコメントアウトになり無効です。
手順④:ファイルを保存してブラウザで確認
- [ファイル] → [上書き保存] を選択して閉じる
- ブラウザで
example.com
にアクセスして、移転先サーバーのサイトが表示されるか確認します
キャッシュが残っている場合は、削除しましょう。
Macでhostsファイルを編集する手順
Macでも、サーバー移転前の動作確認のために hosts
ファイルを編集することが可能です。
ターミナルを使用して編集する必要がありますので、操作に不安がある方は慎重に進めましょう。
手順①:ターミナルを開く
Finder → アプリケーション → ユーティリティ → 「ターミナル」を開きます。
手順②:hostsファイルを開く
以下のコマンドを入力し、Enterキーを押します。
sudo nano /etc/hosts
sudo
:管理者権限でコマンドを実行nano
:簡易的なテキストエディタ
※パスワードの入力を求められるので、Macのログインパスワードを入力します(画面には表示されません)。
手順③:IPアドレスとドメイン名を追記
表示されたエディタの最下部に、次のように移転先サーバーのIPアドレスとドメインを追記します。
123.45.67.89 example.com
123.45.67.89 www.example.com
スペースまたはタブで区切ります。既存の内容は消さずに、そのまま末尾に追加すればOKです。
手順④:保存して終了
以下の手順で保存・終了します。
control
+O
(オー)で保存Enter
キーでファイル名を確定control
+X
でエディタを終了
手順⑤:ブラウザで表示を確認
ブラウザを開いて example.com
にアクセスし、移転先サーバーの内容が表示されるか確認します。
Safariなどで表示が変わらない場合は、一度ブラウザのキャッシュを削除してください。
hostsファイル編集後の動作確認ポイント
hosts
ファイルを編集して移転先サーバーにアクセスできる状態になったら、以下のポイントを中心に動作確認を行いましょう。
移転トラブルを未然に防ぐための大切なステップです。
① サイト全体の表示チェック
- トップページだけでなく、下層ページや投稿ページなども表示されるか確認
- レイアウトの崩れや画像の表示漏れがないかチェック
② 管理画面へのログイン
https://example.com/wp-admin
などからログインできるか確認- ログイン後に403エラーやリダイレクトループが発生していないか確認する
③ プラグインやテーマの動作確認
- カスタム投稿タイプ、スライダー、フォームなど、JavaScriptやPHPで動いている機能が正常かチェック
- Contact Form 7やWooCommerceなど重要なプラグインも動作確認する
④ パーマリンクの挙動
- 投稿ページやカテゴリーページなどのURLが正しく開けるか
- カスタムパーマリンク設定が効いていない場合は、管理画面で「パーマリンク設定」を開いて「変更を保存」してみる(.htaccessの再生成)
⑤ SSL設定(https)の確認
- httpsでアクセスしたときにエラーが出ないか
- 「保護された通信」と表示されるか(証明書エラーの有無)
⑥ 外部リソースの読み込み
- Google Fontsや外部スクリプト(Googleアナリティクスなど)が正しく読み込まれているか
http
やhttps
の混在による「保護されていない通信」エラーが出ていないか
⑦ フォーム送信やECカートの動作
- お問い合わせフォームが正しく送信されるか
- ECサイトであれば、商品追加~購入までのフローが正常かを必ず確認
hostsファイルの設定を元に戻す方法
サーバー移転先での動作確認がすべて完了したら、hosts
ファイルの設定を元に戻す必要があります。
これを忘れると、自分のPCだけが古い設定で表示され続けてしまうため注意しましょう。
① 編集した箇所を削除する
hostsファイルに追記した以下のような行を探します。
123.456.78.90 example.com
123.456.78.90 www.example.com
これらの行を削除、またはコメントアウト(行頭に #
を追加)します。
# 123.456.78.90 example.com
# 123.456.78.90 www.example.com
※コメントアウトすれば再利用もしやすくなります。
② ファイルを保存
- Windowsではメモ帳を「管理者として実行」して保存
- Macではsudo権限で保存(例:
sudo nano /etc/hosts
で編集後、control + o
で保存)
③ DNSキャッシュのクリア(推奨)
hostsファイルを戻した直後は、PC内のキャッシュにより旧情報が残っている場合があります。
以下の手順でDNSキャッシュをクリアしましょう。
Windowsの場合:
コマンドプロンプトで以下を実行:
ipconfig /flushdns
Macの場合:
ターミナルで以下を実行:
sudo dscacheutil -flushcache; sudo killall -HUP mDNSResponder
④ ブラウザのキャッシュ削除 or シークレットモード確認
ブラウザ側のキャッシュが表示を妨げていることもあります。通常の閲覧で表示が切り替わらない場合は、シークレットモードやキャッシュクリアで確認してみましょう。
まとめ
サーバー移転時に hostsファイル
を編集する方法は、DNSの切り替え前に新サーバーの動作確認を行える非常に有効な手段です。
アクセス先をローカルレベルで制御できるため、公開前にトラブルを防ぐ目的で多くの制作者やエンジニアが利用しています。
本記事では以下のポイントを解説しました:
- hostsファイルを使う意味とその有効性
- Windows・Macでの編集手順
- 編集後の確認方法や戻し方
- 編集の際の注意点とDNSキャッシュのクリア方法
この方法を使えば、旧サーバーを維持しつつ、新サーバーの確認作業が安全かつスムーズに進められます。
特にクライアント案件や大規模なサイト移行時には、事前のチェック体制としてぜひ活用してください。
コメント