WordPressの引っ越し作業には、「プラグインを使う方法」と「手動で行う方法」の2つがあります。
多くの人が最初にプラグインを検討しますが、あえて手動で移行するほうが適しているケースも少なくありません。
WordPressを手動で引っ越しする理由
プラグインを使わないメリット
なぜあえて「手動」を選ぶのか、そのメリットや必要性について解説します。
WordPressの移行用プラグイン(All-in-One WP Migration や Duplicatorなど)は非常に便利ですが、以下のようなデメリットや制限があります。
- 無料版はファイルサイズに制限がある(例:512MBまで)
- サーバーによってはプラグインの動作が不安定
- プラグイン依存によるカスタム環境への非対応
- 移行時にPHPのバージョン違いでエラーが起きることがある
その点、手動での引っ越しは「余計な不具合を避けたい人」にとって最も確実な方法です。
手動の引っ越しが向いているケースとは?
以下のようなケースでは、手動移行が圧倒的におすすめです。
- 大容量サイト(数百MB〜GB以上)の移行
- 複雑なカスタマイズをしているWordPressサイト
- サーバー間でのPHP・MySQLバージョン差異がある
- 旧サーバーにログインできず、プラグインのインストールが難しい
- セキュリティポリシーでプラグインの利用が制限されている
また、手動での引っ越し方法を理解しておくと、トラブル時の復旧力が身に付きます!
WordPressの仕組みについて、ぜひ理解しておきたい内容です。
確実・安全・柔軟に移行できるのが手動の魅力
手動引っ越しは、多少の手間はかかりますが、以下のような点で圧倒的な安心感があります。
- サーバー構成やファイル構造を自分で把握できる
- 不具合が起きた時も「どこでエラーが出ているか」がわかりやすい
- WordPressの仕組みが理解できるので、今後のカスタマイズ力も上がる
「安全性」と「トラブル対応力」を高めたい方にとって、手動移行はもっとも信頼できる方法です。
引っ越し前に準備するもの・確認すべきこと
WordPressを手動で引っ越す際は、事前の準備と確認作業が大切です。
「FTP接続できること」「データベースにログインできること」この2つが出来ないと手動での引っ越しは出来ないので、以下の項目を事前にチェックしておきましょう。
サーバー情報(FTP・データベース)の確認
まずは、旧サーバーと新サーバーそれぞれの接続情報を揃えましょう。
- FTPホスト名(例:ftp.example.com)
- FTPユーザー名/パスワード
- サーバー内のWordPress設置パス
- データベース名・ユーザー名・パスワード・ホスト名(通常は
localhost
)
これらは、契約中のレンタルサーバー管理画面から確認できます。
もし、データベースのユーザー名・パスワードが分からない場合は、WordPressのインストールフォルダにある「wp-config.php」に記載されています。

wp-config.php23行目あたり

WordPressのバックアップを取っておこう
万が一、作業中にデータを消してしまっても復旧できるよう、完全なバックアップを取っておきましょう。
- ファイル一式(wp-content含む全ディレクトリ)
- データベース(phpMyAdmin等からエクスポート)
FTPソフトやサーバーのファイルマネージャーを使ってローカルに保存しておくと安心です。
ドメインとSSLの扱いを整理しておく
引っ越し先のサーバーで同じドメインを使う場合は、ドメインのDNS設定変更も必要になります。
また、SSL(https)を利用している場合は、新サーバーでもSSL証明書の再設定が必要です。
新サーバー環境のスペックを確認
- PHPのバージョン(WordPressの推奨は 7.4〜8.1)
- MySQLまたはMariaDBのバージョン
- ファイルサイズ上限やタイムアウト設定
これらを事前に確認しておくことで、移行後の不具合や対応漏れを防げます。
WordPressの手動引っ越し【実践編】
準備が整ったら、いよいよWordPressの手動引っ越し作業を開始します。
このパートでは、サイトのファイルとデータベースをそれぞれ移動し、新しいサーバーで動作させる手順をわかりやすく解説します。
1.サイトファイルのダウンロード(FTPソフトを使用)
まずは、現在使っているサーバーからWordPressのファイル一式をダウンロードします。
- FTPソフト(FileZillaやFFFTP、WinSCPなど)で旧サーバーに接続
public_html
やwww
などのWordPressが設置されているディレクトリを開く- すべてのファイルとフォルダ(wp-content、wp-admin、wp-includes など)をローカルに保存

特に「wp-content」フォルダには画像・テーマ・プラグインのデータが入っているので、漏れなく保存しましょう。
2.データベースのエクスポート(phpMyAdminの使い方)
次に、phpMyAdminにログインして、WordPressの投稿記事・固定ページ・設定情報などが含まれるデータベース(MySQL)をエクスポートします。
ロリポップのphpMyAdminのログイン方法
- サイドメニューの「データベース」をクリック
- 各DB右側の「操作する」をクリック
- 「phpMyAdmin」をクリック
- DBのユーザー名とパスワードを入力し、プルダウンからサーバーを選択してログイン

さくらサーバーのphpMyAdminのログイン方法
- サイドメニューの「Webサイト/データ」→「データベース」をクリック
- 各DB右側の「設定」の中の「phpMyAdminログイン」をクリック
- DBのユーザー名とパスワードを入力してログイン

XサーバーのphpMyAdminのログイン方法
- 管理画面のの「phpMyAdmin(MySQL X.X)」をクリック
- DBのユーザー名とパスワードを入力してログイン

phpMyAdminのエクスポート方法

- 対象のデータベースを選択(
wp_
で始まるテーブルがあるもの) - 上部メニューから「エクスポート」→「詳細」→「SQL形式」でエクスポート
この操作で得られる .sql
ファイルは、新サーバーでの復元に使用します。
3.新サーバーへファイルをアップロード
次は、先ほど保存したWordPressファイル一式を新しいサーバーにアップロードします。
- 新サーバーにFTPで接続
- WordPressを設置したいディレクトリ(例:
public_html
)に移動 - ローカルに保存しておいた全ファイルをアップロード
アップロードには多少時間がかかることがありますが、フォルダ構造を崩さずにそのまま配置しましょう。
4.新サーバーでデータベースを作成&インポート
新サーバー上でも、WordPressが接続できるように新しいデータベースを作成し、先ほどのSQLファイルをインポートします。
- サーバー管理画面から「MySQLデータベース」を新規作成
- データベース名・ユーザー名・パスワードを控えておく
- phpMyAdminにアクセスし、「インポート」から エクスポートした
.sql
ファイルを読み込む

ドメインやディレクトリが変わる場合
ドメインを移管して、アドレスが変わらない場合はこのままでOKですが、変更になる場合はもう一つ作業が必要です。
- 新サーバーのphpMyAdminにアクセスし、「wp_option」をクリック
- 「siteurl」と「home」を編集
- 「siteurl(WordPressアドレス)」と「home(サイトアドレス)」を変更後のアドレスに修正


wp-config.phpの設定変更と接続確認
ordPressが新しいサーバーのデータベースに正しく接続できるように、wp-config.phpの内容を変更する必要があります。
この設定を正しく行うことで、サイトが無事に表示されるようになります。
1.wp-config.phpのデータベース設定を編集
wp-config.php
は、WordPressルートディレクトリにある最重要ファイルのひとつです。

define( 'DB_NAME', '新しいデータベース名' );
define( 'DB_USER', '新しいデータベースユーザー名' );
define( 'DB_PASSWORD', '新しいデータベースパスワード' );
define( 'DB_HOST', 'localhost' ); // 多くのサーバーでは "localhost" のままでOK

FTP経由でダウンロードしたファイルを、テキストエディタ(VSCodeやTeraPadなど)で編集しましょう。
Wordやメモ帳は文字化けの原因になります。
編集後は、**新サーバーへ再アップロード(上書き)**してください。
2.サイトにアクセスして表示を確認
wp-config.php の設定が正しければ、ブラウザでサイトにアクセスすることでWordPressのトップページが表示されるはずです。
- トップページが正常に表示されるか?
- 管理画面(
/wp-admin/
)にログインできるか? - 投稿ページ・固定ページが崩れていないか?
3.表示されない場合の確認ポイント
「真っ白になる」「エラーが出る」などの場合は、以下を確認しましょう。
- wp-config.php の記述ミス(特に
'
や;
の抜け) - DBのホスト名が誤っている(サーバーによっては
mysql1.●●.ne.jp
などの場合あり) - サーバー側でデータベースが正しく作成・インポートされていない
wp-config.phpに以下のコードを一時的に追加すると、エラー内容がブラウザ上に表示されて原因特定がしやすくなります。
define( 'WP_DEBUG', true );
define( 'WP_DEBUG_LOG', true );
define( 'WP_DEBUG_DISPLAY', true );
※ エラー特定後は、必ず WP_DEBUG
を false
に戻しておきましょう。
引っ越し後にやるべき初期設定
WordPressの手動引っ越しが完了してサイトが表示されたとしても、そのままでは不具合やSEO面での課題が残る場合があります。
ここでは、引っ越し直後にやっておくべき初期設定や確認項目をまとめました。
1.パーマリンクの再設定
引っ越し直後は、パーマリンク(URL構造)に関する設定がうまく反映されていないことがあります。
特に投稿ページが404エラーになる場合は、以下の手順で再設定しましょう。
- 管理画面 →「設定」→「パーマリンク」
- 表示されている設定内容を一度保存し直す
これにより、.htaccess
が再生成され、リンク切れが解消されます。
2.画像・リンク切れのチェック
データベース内に古いURLが残っている場合、画像やリンクが表示されないことがあります。
この場合は、Search Replace DBやBetter Search Replaceといったツールを使って一括置換を行いましょう。
http://old-domain.com
→ https://new-domain.com
作業前には必ずデータベースのバックアップを取りましょう!
3.キャッシュのクリアと表示確認
キャッシュが残っていると、新しいサーバーの変更が反映されないことがあります。
- ブラウザキャッシュのクリア
- サーバー側のキャッシュ(LiteSpeed Cache や W3 Total Cache など)の削除
- DNSキャッシュのクリア(再起動や
ipconfig /flushdns
で対応)
4.サーチコンソールとアナリティクスの再登録(必要な場合)
引っ越しに伴ってドメインが変わる場合は、Google Search ConsoleやAnalyticsの再設定が必要になります。
- サーチコンソールで新しいプロパティを登録
- アナリティクスで新URLに切り替え or トラッキングコードの再設置
- XMLサイトマップの再送信
これらの作業を行うことで、引っ越し後もスムーズにサイトを運用できます。
最後に、想定通りの動作になっているかを各ページで確認し、問題なければ完了です!
よくあるトラブルとその対処法
WordPressを手動で引っ越しした際、思わぬエラーや表示崩れが起きてしまうことがあります。
このセクションでは、よくあるトラブルとその原因、対処方法をケース別にご紹介します。
パーマリンクが正常に動作しない
データベース移行後、.htaccessの設定が引き継がれていなかったり、パーマリンク設定が再構成されていないことが原因です。
- WordPress管理画面にログイン
- 「設定」>「パーマリンク」へ移動
- 設定を変更せずに「変更を保存」をクリック(これで.htaccessが再生成されます)
画像やメディアファイルが表示されない
wp-content/uploads フォルダのコピー漏れ、またはパスの違いによって画像が正しく読み込まれていない可能性があります。
- アップロードフォルダが正しくコピーされているか確認する
- 新しいサーバー上で画像URLが正しく変換されているか確認する
- 必要であれば、「Search Regex」などのプラグインで画像URLを一括置換する
ログインができない・ログイン画面がループする
ドメインが変わった際、wp_options
テーブル内の siteurl
と home
の値が旧URLのままになっている可能性があります。
phpMyAdminからデータベースを開き、wp_options
テーブルの以下2つの値を新しいURLに修正します。
- option_name =
siteurl
- option_name =
home
または、wp-config.php
に以下を一時的に記載して強制上書きも可能です。
define('WP_HOME', 'https://新しいURL.com');
define('WP_SITEURL', 'https://新しいURL.com');
サイトが真っ白(500エラー)
ファイルのアップロードミス、PHPバージョンの違い、プラグインやテーマの不具合が主な原因です。
wp-config.php
に以下の記述を追加してエラー内容を表示させる:
define('WP_DEBUG', true);
define('WP_DEBUG_LOG', true);
define('WP_DEBUG_DISPLAY', true);
- 不要なプラグインを一時的に
wp-content/plugins
フォルダから削除またはリネーム - テーマを
twentytwentyone
などの公式テーマに一時的に変更する
内部リンクがすべて旧URLのまま
記事内のリンクやメディアURLが旧ドメインのまま残っているため、移行先でリンク切れが発生します。
- データベースを丸ごとエクスポートして、テキストエディタで一括置換
- もしくは WordPress 管理画面から「Better Search Replace」などのプラグインを使用して、旧URLを新URLに置換する
まとめ:WordPressの手動引っ越しは慎重に、でも確実に!
WordPressの引っ越しを手動で行う方法は、最初は難しそうに見えるかもしれませんが、手順をひとつずつ丁寧に進めれば、プラグインに頼らず自力で安全に移行することが可能です。
今回ご紹介したように、
- サーバーからのデータやデータベースのバックアップ
- wp-config.phpや.htaccessなどの設定ファイルの確認
- サイトURLの変更やパーマリンク設定の更新
- よくあるトラブルの原因と対処法
といったステップを押さえることで、引っ越し後もスムーズにサイトを再開できます。
「自分で引っ越し作業をしてみたい」「プラグインに頼らず柔軟に移行したい」と考えている人には、手動移行は大きな学びにもなります。
トラブルも含めて一つの経験として活かしながら、自分だけのWebサイト環境を整えていきましょう!
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